一人ひとり『色』

サイタコーチングスクールのメールマガジンにてコラムを掲載させていただいております。

よかったらぜひお読みください!


NO.3 一人ひとりの『色』~塾講師VS生成AIアプリ~


中学2年国語の教科書(光村図書)に

「言葉の力」(著者:大岡信)

という随筆が掲載されています。私はこの随筆がとても大好きです。


筆者は、京都の染織家のところを訪れた際、
とても美しい桜色に染まった着物を見たそうです。
そして、その色はなんと黒っぽいごつごつした

桜の皮から取り出したということを知ります。


《桜は全身で春のピンクの色に色づいていて、

 花びらはいわばそれらのピンクが、

 ほんの先端だけ姿を出したものにすぎなかった》


私たちの目には、桜のピンク=桜の花の色

と映りますが、実は桜の木全体で懸命になって最上のピンク色になろうとしている、

ということらしいのです。


人も同じではないでしょうか。

子どもたちは、毎日学校や私の教室で学んでいます。

特に今の時期(※記事掲載当時)は、期末テストを控えた中高生、

受験が直前に迫っている受験生たちが日々歯を食いしばって勉強しています。

私たち大人は、そのような姿を見ると、

「ようやく受験生らしくなったな~」

と思います。

しかし、本当にそれだけでいいのでしょうか?

もしかすると、

とても焦っているのかもしれません。

今すぐくじけそうなのかもしれません。

もしくは、

とても満ち足りているのかもしれません。

私たちの立場のような者は、

子どもたちの表面だけのできごとで判断するのではなく、

その子、その生徒の全身での訴えを見逃さず、

ちょうどいいタイミングでいつでもベストなお手伝いをする必要があるのです。

だからこそ、子どもたちの学習には、『何を学ぶか』だけではなく、

『誰に(誰と)学ぶか』ということも重要になってくるのです。


先日参加したとある教育関係のセミナーで次のような話題が出ました

《「合格できる小論文」を書くことができる生成AIアプリが出てくるかもしれない》

なんと、画期的で私たち塾講師には残酷な話題でしょうか!

隣に座っていたある塾長ががっくり肩を落とし、

「俺の仕事がなくなるじゃないか~」

と嘆いていました。

単語の意味を調べるのであればネットや電子辞書ですぐに知ることができる時代

合格する小論文をAIが示してくれる時代

このような時代、私たち大人(塾講師)の役割とはなんだろう?

私はそのセミナーの最中、ずっと考えていました。

私たち=人には、それまで学んできた経験があります。

それまで生きてきた歴史があります。

そして、子どもたちにも、

それまでに学んできた経験があります。

それまで生きてきた歴史があります。

正解を与える技術はある程度AIや機械に任せたとしても、

正解を得るまでに生徒とやり取りするコミュニケーション=紡ぐ歴史は、

まだまだ私たちがAIに勝る領域なのではないでしょうか。


私たちにはオリジナルの『色』があります。

子どもたちにもオリジナルの様々な『色』があります。

ぜひ、子どもたちの表面に現れるそのときどきの『色』は、

今、その子が全身で必死に表現している『色』であるということを

私たち大人は感じておく必要があるということです。


そして、子どもたちが学ぶ知識や技能

その一つひとつの背後に背負っているものを念頭におきながら、

子どもたちと学び続けていきたい、と願っています。



〈サイタメンバーズ通信2023年11月掲載分(一部抜粋)〉

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